自力で掴み取る

GⅡの守屋美穂の優勝も、同様の性質は見て取れる。守屋はその時点で賞金ランク2位。ただし3位の平高奈菜とは約30万円差。平高は2号艇で優出しており、優勝戦の着順次第では逆転は充分にありえた。それをどこまで意識していたかはともかく、守屋が見せた躊躇のない4カドまくり一撃は、平高に先着すればいいのだというある種の守りの姿勢では説明がつかないものだった。自力で結果を掴みにいくのだという思いが伝わってくる迷いのない外マイ。その結果とは、優勝でもあり、トライアル初戦1号艇でもあるだろう。
守屋は昨年、SGとGⅠの準優Fのペナルティでクイクラ出場を逃している。今年は当然、期するものは大きいだろう。そのためにも、ただ年末の大勝負に出るだけではだめだった、のかもしれない。そこには、もう大村行きを決めたのだから、という考え方は微塵も見当たらない。だからこそ、気迫のカドまくりは見る者の胸を打つ迫力があった。

SGの山口剛もまったく同じだ。優勝戦を迎えて、山口はグランプリ出場をほぼ手に入れていたと言っていい。無事故完走で賞金ランク18位以内浮上が確実だったのだ。つまり、ゴールさえすれば6着でもかまわない。むしろ勝負に出て転覆とかは絶対に避けたいところだし、気が逸りすぎて勇み足なんてことになれば目も当てられない。グランプリのことだけを考えるのなら、勝負する必要はなかったのである。
しかし山口は「まだ何も掴み取ってはいない」と戦前に語っている。いや、グランプリ出場は掴み取ったも同然、と突っ込みたくなるところだが、山口は本気でそう考えていたのだろう。もちろん掴み取っていないのは栄光だし、またグランプリにただ出場すればいいとも考えていなかった。ということは、掴み取っていないもののなかには黄金のヘルメットも含まれていたかもしれない。少しでも賞金ランクをアップさせれば、トライアル初戦をより有利に戦うことができる。それが黄金のヘルメットへの道の険しさを和らげる。まあ、そこまで考えていたかどうかはともかくとして、山口は無事故完走でのグランプリ行きではなく、真っすぐに優勝だけを目指していたということになるだろう。
我々外野の人間は、このチャレンジカップでは特に、さまざまな状況を勘案しながらものを考えがちである。だが、それでは大きな栄誉は手に入れられない。トップグループの一員としてそれを目指すレベルには辿り着けないのだろう。ここで記した選手たちだけではなく、この舞台でしのぎを削ったビッグレーサーたちはそういうものを福岡の水面に刻み付けたのだと思う。彼らが見せてくれる全力疾走、それは実に尊く感動的だ。(黒須田)
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