
SG第61回ボートレースクラシックin蒲郡レポート
愛弟子の分まで

準優勝戦で、定松勇樹が1着を獲りながら、不良航法で賞典除外となった。4カドだった定松はスタートでのぞいた隊形となり、そのまま内を絞めていってまくり切っての勝利。しかし、3コースで舳先ひとつで粘った佐々木完太を押圧する格好となり、2コースの山田康二と挟み込まれた佐々木がエンスト失格。たしかに危ないシーンであり、近年は絞め込みに対してかなり厳しいジャッジが下される傾向が強いので、裁定については致し方ないのかな、と思っている。
しかし、僕は定松の勝ちたい気持ちを否定したくはない。というより、のぞいた隊形で、「まくれる」と判断したら一気に絞めていく選手の気持ちは、僕自身は大好きであるし、実に信頼できる姿勢だと思っている。また次も買いたくなるというか。あそこで躊躇なくまくってくれるから、次の4号艇でまた定松から狙いたいとワクワクするというか。また、このレースで6号艇に入った久田敏之が、泣けるコメントを残している。「選手は(あの隊形なら)左に行きますよ。定松を責めないでほしい」という主旨のものだ。選手の本能として、あの攻め方は当然だということだろう。
もちろん、事故はあってはならない。その戒めとしてのジャッジがああいうものだったとするなら、定松も我々も受け入れるのが妥当だ。佐々木がエンストで済んだことに胸を撫で下ろしながら(内の山田やイン山口剛も危ないところはあっただろう)。あそこで粘りすぎた佐々木が引くべきだったという意見もあるだろうが、“死に体”というものに正式な定義がない以上(このあたりの議論は必要となってくるかもしれない)、佐々木のまくられたくないという気持ちもまた理解しなければならないだろう。そして、望みがあるなら踏ん張ろうとする佐々木もまた、次に狙いたくなる選手の一人である。とにかく、大きな事故にならずに済んだことに幸甚を感じつつ、気持ちがぶつかり合う勝負になったことにボートレースの凄味を改めて感じるわけである(と言いつつ、選手の皆さん、事故には本当に気を付けて!)。
定松は先頭を走りながらも、自身に不良航法の裁定が下ることを覚悟していたのだろう。ピットに戻ってきたときの定松は、ひたすらに複雑な表情となっていた。半分泣き顔にも見えたくらいだ。エンスト失格となった佐々木に対する懺悔の思いもあったか。出迎えた峰竜太もまた、引き攣った顔で定松に言葉をかけていた。師匠もまた、愛弟子が優勝戦への道を断たれる予感を抱いていたことだろう。

優勝戦、峰はさまざまな思いを抱いて戦ったはずだが、そのなかにきっと「定松の分まで」という気持ちが強く含まれていたはずだ。本当は優勝戦で剣を交えたかった。愛弟子の遠慮会釈のない強攻に対峙したかった、しかしかなわなくなったのならせめて定松の思いも背負って戦う。そうした気持ちは確実にあったと思う。
だとするなら、峰に死角なし、僕はそんなふうに直感したのだった。モーターのパワーは、優勝戦に入っても決して上位だったとは思わないし、峰もまたそれを自覚しているようだった。峰は優勝戦前日の会見で、機力に対して「充分な仕上がり」と言った。自分より出ている選手はいると認識したうえでのその表現だ。比較では劣勢であろうとも、勝つために、あるいはしっかり自分の戦いをするために、充分な仕上がり。それは、どこか腹を括っている姿のようにも感じられた。かつての峰なら自分を鼓舞する意味でも「出ている」と強弁していたはずだが、そうはしなかったのだ。その時点で、峰の逃げ切りの可能性は高いだろうと推測していたが、そこに愛弟子の気持ちが乗っかったのなら、負ける要素はかなり少なくなったのではないか。そう考えたとき、「展望BOATBoy」やレジャチャンサプリで提示する予想は峰本命で決まった。まあ、データなり何なりの根拠を添えて解説することになるんですけどね。
ようするに、優勝戦で僕は峰の気持ちに一票投じたわけだ。先頭ゴールを果たし、ピットに凱旋したとき、出迎えたのは定松ひとりだった。他の佐賀支部勢はやはり優出していた山田康二の出迎えに駆けつけていたのだ。峰は多くの関係者や報道陣に囲まれながら、自分の世界に浸っているかのように、定松と熱い抱擁を交わした。それを見ながら、僕は峰の気持ちに投じてよかった、そうしみじみ思っていた。山口剛と桐生順平をヒモに据えた予想は外れていたけれども……って、それは完全にヒモを読み違えた自己責任だけど。(黒須田)
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