
SG第72回ボートレースダービーin津 レポート
明るい未来

まず光を当てたいのは、地元勢で唯一の参戦となった新田雄史の奮闘だ。引き当てた56号機は数字的にも下位で、実際の動きも決して良好とは言えなかった。予選の成績を見れば、1号艇でイン逃げを決めた1勝のみで、あとはよく“しのいだ”と言うべき成績。だから、新田は節間を通して整備に追われることになっていた。
部品交換の発表がなかったレースは全8戦中2戦。それ以外は、何らかの部品交換が行なわれて(発表のない部品を交換した可能性はある)出走している。整備室を覗き込めば日々、新田の姿があった。優勝戦でもキャリアボデーの交換があったように、劇的に機力が上昇したことはなかったと思う。それでも、プロペラ調整も含めて懸命に戦い、優勝戦まで駒を進め、地元の期待に応えてみせた。選手代表も務めていたから、その激務もこなしながらの健闘である。その必死な戦いぶりは尊かった、そう言うほかない。

健闘が光った選手をもうひとりあげるなら、やはり柴田光ということになる。デビュー34年5カ月でつかんだSG初出場。歴代最遅記録、と書けばどこかネガティブな響きもあったりするわけだが、これはとてつもなく素敵な記録である。コツコツと地道に努力を続け、53歳でついにSGの舞台に辿り着いたことがいかに素敵なことか。群馬支部勢は、柴田の出場記念に作られたという、「継続は力なり」と背中に大書されたTシャツを着用して、ベテランの初陣を後押ししていた。
その舞台で一定の結果を出したのも見事だった。2日目にはイン逃げでSG初勝利の水神祭。群馬勢はみな、我がことのように喜んでいたものだ。師匠の江口晃生も目を細め、「江口さんも一緒に飛び込まないの?」と尋ねられて「勘弁してよぉ」と笑う顔がなんとも嬉しそうだった。さらに柴田は、勝負駆けをクリアして準優進出。そして準優でも、赤岩善生の前付けを制して自分から前付けに動き、ダイナミックなレースを演出することとなった。惜しくも優出は逃したが、これはぜひ次回への“宿題”としていただきたい。柴田が積み上げてきたものは、SGでも通用するものだと証明した準優出である。今がピークと考えれば、ふたたびSGで再会することは充分にある話だし、その機会が来ることを期待したい。
柴田の師匠である江口も、コース獲りから沸かせ、白星もあげて、準優行きの可能性を残して予選最終日を迎えている。残念ながら勝負駆けには失敗したが、まだまだ健在であると示したダービーだったと言える。また、原田幸哉は50歳の誕生日だった4日目(10月24日)に、バースデーウィンをあげている。この日、原田に回って来た枠は6、である。誕生日に大外枠、である。しかも勝負駆けで、条件は3着以上。なかなか厳しい勝負駆け、そして誕生日だったわけだ。そんなビハインドを原田は勝利というかたちで乗り越えたのだ。前付けで4コースを奪うと、見事なまくり差しで突き抜けた。あまりにも見事な勝負駆け、そしてバースデーウィン。この誕生日で原田は50歳を迎え、彼が最優秀新人を受賞した頃から見ているこちらとしては唖然ともするわけだが、この年になってもまだまだ強い! 次節のGⅠ浜名湖賞を制してグランプリの切符も掴んだ原田は、江口同様に健在ぶりをこのダービーでもアピールしてみせたのである。(次ページへつづく)
BOATBoy最新号
boatboy newest release
