
佐藤の快走は痛快だった。佐藤の30号機もまた伸びに特徴があると目されていたが、初戦の逃げ切りを見る限り、出足やレース足関係も上々と見えた。佐藤の調整が当たった部分もあったのだろう。2日目には4カドまくり一閃。これは佐藤の得意技とも言えるものである。佐藤はルーキーの頃からしばしば、強烈な4コースまくりを披露してきた。個人的に、僕はその一撃が大好きだった。3コースが攻め手となりやすい現代ボートレースではあるけれども、インvsカドがセオリーと言われた時代にボートにハマった者としては、やはり4カドまくりにはときめく。まくり差しを多用する若手選手も少なくないなか、その果敢な攻撃は将来を期待させるに充分のものだったのだ。
ファン感謝3Daysボートレースバトルトーナメントの優勝はあったけれども、ここまでの佐藤は決して順風満帆だったわけではない。バトルトーナメントもA2級での優勝だった。SG初出場は昨年のボートレースメモリアル。東京支部の若手といえば、最優秀新人も受賞した宮之原輝紀がリードしてきた状況で、もちろん僕も彼にも思い入れが強い。一方で強攻も少なくない佐藤もずっと気にしてきた存在で、だからメモリアルで選出されたことは単純に嬉しかったし、ボートレースダービーで自力のSG出場を果たしたことも実に頼もしく感じていたのだった。
そんな佐藤が、SG初優出で1号艇にすわり、そして逃げ切った。東京支部から新たなるヒーローが誕生した! 心沸き立つ出来事と言うしかない。今まで、SG優勝戦1号艇で失敗してしまったケースをいくつも見てきた。SG初優出1号艇ならなおさら。初のSG優勝戦1号艇でも、あの峰竜太ですら一敗地にまみれたのだ。佐藤は、あくまで外野から見ている分には、落ち着いてその日を過ごし、落ち着いてレースに臨み、確かな足取りで逃げ切った。見事と言うしかない!
その佐藤は、優勝後の囲み会見で今後の目標を訊かれ、「グランプリ」と口にした。このクラシック制覇は、佐藤にグランプリ行きの道を開いた。今後も順調に走れば、問題なく暮れの住之江で11Rか12Rを走ることになるはずだ。だが、佐藤はこう続けたのだ。「グランプリに毎年行けるような選手になりたい」。そう、このクラシックはゴールではない、ということだ。SG制覇は目標達成の瞬間ではあるはずだが、しかしその先を見据えて、さらなる成長を誓ったのである。
表彰式を終え、水神祭を待つ仲間のもとに戻ったとき、その途上にいた僕はたまたま佐藤と言葉を交わすことができた。佐藤は言った。「ここから強くなりますから」。このクラシック制覇を契機としてのさらなる成長という意味でもあろう。また、SG覇者に恥じないボートレーサーになってみせるという決意でもあるだろう。いずれにしても、佐藤はここで立ち止まることなく、もちろん満足することもなく、果てしない前進を胸に描いているのである。なんと頼もしいことか。
これに刺激を受けた選手たちは、宮之原や関浩哉ら115期の同期生を筆頭に数多くいるはずだ。僕は願う。佐藤隆太郎が東京支部を牽引する存在になることを。いや、ボートレース全体を活性化させる強いレーサーになることを!(黒須田)
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