
SG第36回グランドチャンピオンレポート
紆余曲折

紆余曲折、というべきだろうか。吉田拡郎が引き当てた37号機は、その2節前に菅章哉が仕上げたモーターで、前節に引いた柴田直哉はその仕上げを受け継いで全レース、チルト3度で出走していた。もちろん、吉田の手に渡ったときにも、3度に跳ねられていたのである。
前検、吉田は3度のままで臨み、前検タイムは一番時計。吉田はそのまま初戦を走ることも視野に入れていた。ところが、その初戦で回ってきたのは2号艇。それを知った吉田が「悩む……」と渋面を作ったのを目撃している。結局、吉田はチルト3度で初戦に臨み、6コースから3着。伸びてはいたが、5コースを叩き切ることもできなかった。
これで吉田は3度封印を決断。すぐさま、プロペラを叩き変える作業を始めている。すると、2日目の前半レースに回ってきたのは6号艇。内枠で3度で走る決意をし、しかし3度では戦えないと調整を変えたら大外枠が回ってくる。何ともチグハグな歩みとなってしまったわけだ。
もし2走目も3度のままだったら、と夢想したりもする。あるいは、初戦で大外まくり一撃を決めていたら、その後はどう戦っただろう。しかしながら、迷いながらも下した吉田の選択は吉と出た、ということになる。チルトを0度に下げて臨んだ6号艇で、6コースから2着。2日目2走目は、インから逃げたはずの宮地元輝が2マークでまさかのミスターンとなり、逆転で1着となっている。運を味方につけた瞬間、だっただろうか。そうかと思うと、3日目の1号艇では中田竜太の差しを許して2着。ただし、他の選手も得点率を思うように伸ばせず、4日目の3号艇2着で予選トップ通過を決めることとなった。得点率2位は宮地で、もし2日目の後半、順位が入れ替わっていなかったらどうなっていたかわからない。右へ左へと揺れ動きながらも、しっかりと己の判断に従って戦い続けた結果、吉田は勝利の女神の微笑みを手に入れたのだろう。
思えば、吉田自身の歩みにも紆余曲折はあった。14年のオーシャンカップでSG初優勝を果たし、翌年もグランプリ勝負駆けまで持ち込んでチャレンジカップ優勝戦で同期の石野貴之と激闘を繰り広げるも、その後は18年オーシャン準V以外は大きな結果を残せず、一時はSG戦線を離れたこともあった。それでも着実に己を磨き続けた結果、11年9カ月ぶりのSG戴冠を果たしたのだ。年齢は44歳を迎えていたが、今一度、充実期を迎えたといっていいはずだ。大きな決意を抱いて臨んだ14年グランプリは結果を出せなかった。今こそあのときの雪辱を果たす時だ。(黒須田)
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