
彼らが銀河系軍団と言われるようになったのはいつのことだったのか。時系列で追えば、04年に田村が先陣を切ってSGを制し、グランプリにも出場。07年に湯川がSGを制して、その年の暮れには井口ともどもグランプリに駒を進めて、しかも揃って優出。翌年は井口がSG初制覇を果たし、グランプリも優勝した。09年には丸岡正典がSG初優勝。少し開いて13年に森高がSG覇者となり、同一期から5人のSGウィナーを輩出したのは69期に並ぶ最多タイである。その間にも、GⅠ優勝は多数。SGを制していない選手では、山本隆幸、興津藍、そして女子GⅠで圧倒的ともいえる実績を残す田口節子らがGⅠウィナーである。銀河系軍団とはもともと、サッカーのレアル・マドリードがスター選手をズラリと擁していたところから、ボート界のスター集団という意味で授けられた愛称(山本が言い出したという説も)。彼らが積み上げてきた実績や、ボート界に築いた勢力を思えば、実にふさわしいチーム名と言える。
思えば、今回の優勝戦に森高、湯川、井口と3人の銀河系勢が名を連ねていたのは、彼らがボート界を席巻してきた時代がたしかにあったことを、思い出させるものでもあった。SGには常に複数選手を送り込み、その節の最大勢力であることもよくあった。そのうち誰かが優出、ということも普通のことだったし、先述した07年グランプリのように複数が優出ということだって珍しくはなかったはずだ。本誌でもずいぶん前に彼らの特集を組んだことがあったし、ボートレース界における巨大なブランドとなっていたことは間違いない。しかも、SGウィナー5人のうち3人が20代でのSG初制覇。まだ若手といって差し支えない時期に、SG記念戦線の中心勢力を担ってきたわけである。

そんな彼らがマスターズ世代となり、来年はついに全員が4月1日時点で45歳以上となる。そうしたタイミングで、優勝戦に3人が進んだというのは、まさに銀河系旋風が巻き起こった頃を想起させるものだ。そして、そのなかから優勝者が出たということが、改めてこのスター集団の層の厚さを思い出させてくれたと言えよう。
森高は優勝後、自身が名人と呼ばれることへの違和感を表明している。自分はまだ名人の域には達していない、と。たしかに、このタイトルが生まれた頃のイメージを当てはめれば、46歳の森高はまだまだ若い。今回だって、自分より登番が上の選手は40人以上が参戦しており、その意味でも自分よりその称号にふさわしいと思える選手もいたことだろう。いや、正直、僕もまた、森高名人と口に出して不思議な思いにとらわれたりもするわけで。約20年前にSG取材に行き始めた頃、なにかとこちらにちょっかいをかけてきた若き日の森高一真を思い出せば、45歳を超えたのだという事実が信じられなかったりする。まあ、いつまでも若さを保ち続けているということでもあるでしょうね。
それでも、井口も森高もたしかに名人位に就いたのである。どこかくすぐったい思いがあるのならば、その称号にふさわしい結果を残すしかない。たとえば、来年以降もういちど、このタイトルを手にするのでもいい。あるいは、やはりSGだ。彼らが時代を席巻したと書いたが、それを過去形のままにしてはならない。銀河系のSG制覇は井口の18年クラシックが現時点では最後。7年前のことである。森高のSG制覇は13年チャレンジカップだから、暦が1周してしまった。今こそ、これらを上書きするときが来た、と森高のマスターズチャンピオン制覇を機に、言ってしまいたいと思う。
マスターズ優勝戦に複数の85期がいたことで往時を想起するのではなく、ふたたびSG優勝戦に複数を送り込んで、マスターズ世代になっても健在であることを見せつけられる。そう望みたいのだ。まあ、ようするになんだかんだで銀河系の一員が、森高一真がPGⅠとはいえタイトルを手にしたことは、彼らのレーサー人生とボートレースを伝えてきた自分の人生が重なっている僕には、やはり嬉しいことだったのである。(黒須田)
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