
森高名人
一本、芯が通っている男である。それは、どんな時でもまずブレない。彼がよく口にしてきた言葉がある。「自分はギャンブルの駒である」。ボートレースという競技は、他のプロスポーツと違って、入場料やグッズ収入などでプレイヤーのギャランティを賄うものではない。ファンが買ってくれた舟券がすべての原資。つまり自分がボートレーサーであり続けられるのは、自分が舟券の対象であるからだ。ならば、自分の舟券を買ってくれたファンの期待に応えるしかない。応援してくれたファンが潤うのならば、それがやりがいであり、最高の幸せ。そうした信念は本当にブレないから、自分を大きく見せることもしないし、カッコつけたりもしない。まあ、本当は優しいのにコワモテぶってみせたりはするけれども(笑)。
優勝戦1号艇。現代ボートレースでは自分から買うファンが最も多い、ということと同義である。特別それを大言することはしない男ではあるが、胸の奥では闘志を燃やしていたことだろう。そして、その炎はこの男を名人位に就けさせることになった。ファンの期待に応え切ってみせたのだ。ウィニングランに向かう際、「よっ、名人!」と声を掛けると、「名人じゃねーよー!」と吐き捨ててレスキューに乗った。偉大なる先輩もいるなか、この大会では若手の部類であることから、名人と呼ばれるのはおこがましいと思っているのかもしれない。しかし、彼が魅せた魂の逃げは、名人技がなせるわざだ。間違いなく、彼は森高一真名人、なのである。(黒須田)
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